外国人雇用における人材育成!教育体制や研修内容と対策
外国人雇用における人材育成とは
現在は、外国人従業員を雇用する企業も珍しくなくなりました。
外国人の雇用を具体的に考えている企業の課題の1つが、外国人従業員にどのような社内教育・研修を行うかです。
言葉や文化の違いを超え、同じ企業で働くスタッフとして意識を合わせるにはどうしたら良いのでしょうか。
そこで今回は、外国人を雇用する際の教育や研修、評価制度など、企業で行うべきアクションについて解説します。
1.外国人人材の教育訓練について
外国人を雇用している企業の多くでは、外国人従業員向けの教育訓練が行われています。
なぜこのような訓練が必要なのか、まずはそこを理解しましょう。
1つには、外国人従業員に企業の考え方や、企業で働く上でのルールを身に付けてもらうという目的があります。
外国人は、日本とは全く異なる環境で生活をしてきた人たちです。
日本人であればなんなく判断できる常識やルールなども、外国人にとってはピンとこないというパターンは大いにあり得ます。
また、外国人にとっては当たり前のことも、日本でポピュラーなことであるとは限りません。
双方の理解が不十分なままにしていると、仕事をしていく中で摩擦やトラブルの元となるリスクもあります。
そこで教育訓練を行うことにより、その企業において求められる従業員像を提示するとともに、日本で仕事をする際に必要な基本的知識やマナーを養うことができます。
日本語教育を行うことも、教育訓練の大きな目的です。
コミュニケーションをとる上で、言葉による意志の疎通は非常に重要です。
例えばお互いの感情や思っていることをおおまかに伝えるだけであれば、そこまで語学力は必要ないのかもしれません。
しかし、仕事の中では細かなニュアンスを言葉で伝えなければならない場面も多々あります。
基本的な日本語スキルに加え、各業種・職種で頻繁に使用される表現や専門用語なども必要になります。
企業が日本語教育を行うことで、業務に必要な範囲の語学を効率的に習得することができるでしょう。
また、自分の働く職場がどのような場所なのかを理解する上でも、教育訓練は有効です。
何を目的としてどのように動いている場所なのか、自分の配属部署は社内ではどのような役割をもっているのか、そういった職場に関する全体的な仕組みや情報を理解しておかないと、自分の仕事もスムーズに進めることはできません。
これは外国人に限らず、新しく入社した従業員には全て言えることでしょう。
教育訓練の方法はいくつかあります。
例えば参加者を1箇所に集めて行うタイプの研修では、グループワークなど参加者同士を関わらせたプログラムが可能です。
eラーニングを利用すれば、各受講者がそれぞれ自分の都合の良いタイミングで訓練を受けることができます。
職場環境や仕事内容などを加味しながら、適した研修形式を選ぶことも大切です。
2.外国人雇用における研修内容とは
それでは実際、外国人を雇用した際どのような内容の研修を行えば良いのでしょうか。代表的なものをピックアップしました。
ビジネスマナーは仕事において必要不可欠です。ビジネスマナーを習得することにより、取引やコミュニケーションをスムーズにし、業務を円滑に進めることができるでしょう。
研修は、全従業員が参加必須のタイプのほか、各従業員がそれぞれ自分で学びたい分野の研修を選択する自己啓発型のものもあります。例としては、接遇・折衝交渉術・ロジカルシンキング・リスクマネジメント・メンタルヘルスなどの研修がよく見られます。自己啓発的な研修によって、自己をさらに高め、仕事に対する意欲やモチベーションをアップさせることが可能です。
その企業の社員として身に付けておくべき、基礎的知識を学ぶ社員研修も重要です。会社の理念や沿革、事業内容、組織、各部署の業務内容など、会社にまつわるさまざまな事柄を学びます。社員研修を受けることにより、自分がこの企業の一員であるという自覚を強めてもらえるでしょう。
講師から受講者に知識やスキルを伝えるという一般的なスタイルとは少し異なる形の研修もあります。その1つが「メンター制度」です。これは、異なる部署・業務担当から先輩社員である「メンター」と新人社員である「メンティ」を2人1組にし、メンターがメンティの相談相手になるという仕組みです。全く異なる部署同士のペアにすることで、同じ所属・業務の人にはなかなか言えないようなことも、ストレスを感じず話すことができます。このような、メンタルのコントロールを意識した研修は、育った国と異なる環境で働くというストレスにさらされるであろう外国人社員にとっても、非常に重要だと考えられます。社内に複数外国人社員がいる場合は、同じ国同士の社員をペアにしたり、母国語が同じ社員同士をペアにしたり、適宜配慮しましょう。
OJTとは「On the Job Training」の略称で、実務の中で仕事に関するトレーニングを行っていく研修方法を言います。座学の研修を受け、知識を身に付けたとして、それを実際に業務に活かせるかどうかはまた別問題です。OJTを行うことで、身に付けた知識・スキルを、実際に使える知識・スキルに昇華することが可能です。なお、実務から離れた場所で行う研修をOFF-JTと言いますが、OJTとOFF-JTをうまく組み合わせることによって、研修の効果をより高めることができます。
一定のスパンで所属部署や業務担当を変更するジョブローテーション制度も、多くの企業が取り入れている研修の1つです。仕事は1つの部署で成り立っているものではなく、全ての部署が関連し合って動いているものです。ジョブローテ―ションによって、自分の仕事が事業にとってなぜ必要なのか、どのような役割を担っているのかをさらに深く理解し、仕事への意識を高めモチベーションを上げることができるでしょう。
3.資格取得について
社員に資格取得をすすめている企業は多数あります。外国人社員にも積極的な資格取得をすすめることで、自己研鑽やキャリアアップにつなげられるでしょう。ここでは、外国人社員におすすめの資格をピックアップしてご紹介します。
中央職業能力開発協会が行っている、事務系職種に関する検定試験です。「人事・人材開発労務管理」「企業法務・総務」「経理・財務管理」「経営戦略」など、試験内容が非常に幅広いため、資格取得の勉強をすることで、事務職種の総合的な知識やスキルを身に付けることができるでしょう。BASIC・3・2・1級に分かれており、上級になるほど難易度もアップします。なお、BASIC級の試験内容は「生産管理」と「ロジスティクス」のみですが、3級以上は範囲が一気に広くなります。事務的な知識は業界を問わず活用できるので、キャリアアップにもおすすめです。
一般財団法人職業教育・キャリア教育財団が実施、文部科学省が後援している検定です。通称は「B検」。ビジネスにおいて必要な知識・スキルを認定するもので、マナーやコミュニケーション、提案力、論理的思考力、マネジメントなど、幅広い内容から出題されます。検定に向けた勉強によって、社会人に必要な基礎的知識やスキルを習得できるでしょう。なお、3・2・1級があります。
経済産業省が行う国家試験です。情報処理技術者として基本的な知識・スキルが身に付いていることを認定するもので、SEやエンジニアにとってはポピュラーな資格の1つでもあります。IT業界で働くなら取得しておいて損はないでしょう。なお、より難易度の高い「応用情報技術者試験」もあるので、段階的に取得を目指すのもおすすめです。
公益財団法人日本国際教育支援協会と独立行政法人国際交流基金が実施している、日本語スキルに関する検定試験です。日本語を母国語としない人のみが受験対象であることが大きな特徴です。レベルがN1からN5まであり、数字が小さくなるほど難易度が上がります。日本国内だけでなく、海外会場でも実施されているので、入社時点で既に何らかのレベルの資格を取得している外国人も少なくありません。自分の日本語スキルを計る指標となるため、モチベーションアップにつながりやすいでしょう。
4.外国人雇用の評価制度について
社員の評価制度をしっかり整備し、正しく機能させられるかどうかは企業にとって非常に重要です。
なぜならば、もし社員が自分の働きが正当に評価されていないと感じた場合、業務に対する意欲の低下や離職を引き起こす可能性があるからです。
このような傾向は外国人にも強いので、自分のキャリアアップに繋がらない企業だと判断すれば、より良い環境を求め職場を去ってしまうでしょう。
反対に、自分の仕事がしっかり評価されていると感じれば、モチベーションが上がり、より会社に貢献してくれます。
評価制度でよく用いられているのは目標管理制度です。
これは、社員が自分自身で目標を設定し、その目標をどの程度達成したか評価する人事評価制度です。
外国人社員の評価をする際、どのような評価方法を設ければ良いのかと頭を悩ませるかもしれません。
しかし、目標管理制度であれば、外国人社員も日本人社員も、無理なく同じ仕組みで評価することができます。
この目標管理制度のポイントは、目標を自己設定できることです。
自分で決めた目標なので、社員が「達成不可能な目標を設定された」と感じることはないでしょう。
ただし、目標設定にはコツがあります。
それはいとも簡単にクリアできてしまうレベルや、どんなに頑張っても達成不可能なレベルの設定をしても意味がないということです。
適度な努力で達成可能な目標を設定することにより、社員の成長を上手く促せるでしょう。
また、目標だけでなく、達成するために具体的にどのようなことを行うのか、どのくらいの期間で達成するのかなど、達成のための具体的な計画を立てさせることも大切です。
必要に応じて上司からのフォローも必要です。
そのほか、評価の基準を説明するための資料や社員が記入する書類などは、日本語版と別に英語版も作成し、外国人社員がしっかり理解できるようにしましょう。
5.外国人雇用するための管理体制
外国人を雇用する上で、重点的に整えておくべきなのは人事管理と相談体制です。
人事管理には、外国人社員が入社する前段階から入社後まで、きめ細やかなフォローが求められます。
例えば、自社に就労することを目的に外国人を海外から呼び寄せる場合、就労ビザ取得のため、在留資格認定証明書の申請を行ったり、入社までの調整を行ったり、さまざまなサポートをする必要があります。
また、証明書は発行まで数ヶ月かかるので、ビザを取得するための日数なども踏まえながら、入社に間に合うようスケジュールを組まなければなりません。
なお、外国人社員は、在留資格の申請時に申告した業務にしか従事できないことにも注意が必要です。
配属部署や担当業務を決める際は、在留資格の範囲内になるよう配慮しましょう。
ほかには、外国人社員に自社のルールを守ってもらうだけでなく、企業側が外国人社員の文化に対し理解することも大切です。
日本人から見れば物珍しかったり、不必要に感じられたりすることも、外国人社員の文化では非常に重要であるという場合もあります。
多様な文化を認め合うことこそ、グローバルな企業にとってなくてはならない意識でしょう。
外国人社員が社内において、自分の能力をフルに発揮できるよう、モチベーションを維持しやすい環境の整備が求められます。
その上で、外国人社員が気軽に利用できる相談体制をつくり、外国人社員のメンタルのケアを行うことも企業の大切な役割です。
英語や外国人社員の母国語が話せる外国人カウンセラーを配置するなど、できるだけ外国人社員が相談しやすい環境を整えます。
また、メールでの相談など、対面式でない相談体制も有効です。
日本人も外国人もお互い理解し合い働けるグローバル企業を目指そう
企業にとっては日本人も外国人も同じ社員です。
しかし、異国の地で働く外国人社員の状況を加味し、外国人社員が意欲をもって勤務を継続できるよう、教育訓練や管理体制などさまざまな部分をしっかり整備する必要があるでしょう。
ぜひこの記事を参考に、外国人雇用に必要な体制・環境づくりに取り組んでみてください。
そして日本人も外国人もお互いを理解し高め合うグローバル企業を目指しましょう。